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 ―――。   激しい吹雪の音に混ざって、何かが戸にぶつかったような音が聞こえた。  女がふと、顔を上げる。   「······」  小屋の中で、囲炉裏の横に座り込んだ女は、その両手を受け皿のようにして、何かを掬っておるところだった。  よぉく目を凝らして見れば、さらさらとその女の手のひらをこぼれていくのは、真っ白な、雪。  こぼれおちた雪は、どこかへ消えていく。  繰り返しても、繰り返しても、床板も、敷かれた蓙も、何ひとつ濡れることは無い。  さらさらさらさら····  女は雪以外のものを、何も掴めぬ。     雪以外のものは、すべて幻に過ぎぬ。  ―――ゆえに、掴みたくても、何もない。  
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