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3.
夜半の闇のなか、小さな薪の炎が揺れている。獲物を狙う蛇の赤い舌のように。
囲炉裏のそばにおかれた藁で出来た蓙の上に旅人の男は横たえられている。
その面差しには少しずつ血色が戻っていた。
見ればまだ二十を数えるかどうか。
若く、そして整った顔立ちの男。
やがて男は、静かに目を覚ました。
薪の爆ぜる音に、かすかに眉が寄る。そしてすぐに男は蓙の上に跳ね起きた。
小屋の中を見回すなり、傍らの女の存在に気がついた。
「···かたじけない。助けてくださったのか」
男の声には、市井のそれとは明らかに異なる、落ち着きと気品が滲んでいた。
女は傍らに控えたまま、無表情に、いつもどおりの答えを返す。
「―――まだ息がおありでしたので。中へ、お招きいたしました」
ぱち···、と薪の爆ぜる音。
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