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琥珀色の嘘
もう二十数年の遠い昔の思い出話。友人とインド旅行の冒険に出かけた。
貧乏学生旅行の定番航空会社に搭乗した。座席に着くと、周りはインド人ばかり。独特な香辛料の香りが機内に漂っていた。友人は初めての海外旅行で、ガチガチに緊張していた。
「座席に着いたら靴を脱いで正座するんだよ」ベタな冗談を言っても、反応が鈍い。そんな友人を見ていたら、自分まで不安な気持ちになってきた。
飛行機の離陸直後の浮遊感が苦手で、ジェットコースターは乗りたくない派である。友人の手前、経験者としてのちっぽけな威厳を示そうとしていた。
恐怖の離陸を無言で耐えた。安定飛行になり、シートベルトサインが消えた。キャビンアテンダント(当時はスチュワーデス)が機内サービスを開始した。
緊張が解けない友人に軽い嘘をついた。「ビールはお金かかるよ」と言ってみた。友人は「そーなんだ。知らなかったよ。ありがとう」と信用してしまった。
キャビンアテンダントが英語でオーダーを聞いてきた。
Would you like something to drink?
通路側に座っている友人は元気な声で「ビーア、プリーズ」と言ってしまった。
缶ビールを手渡されるときに、キャビンアテンダントから予想外の言葉が発せられた。
one dollar , please.
いきなり、アルコールを注文する友人にも驚いたが、有料サービスだとは思ってもみなかった。飛行機はタダという感覚がしみついていた。
前回の旅行で残っていた小銭を持っていたため、1ドルコインを手渡し、事なきを得た。
そして、隣の席の私に「something to drink?」がきた。手元のコインが足りなく、不安な声で「コーラ、プリーズ」と答えた。
ソフトドリンクは無料だった。
この嘘は何色だろうか?
私は『琥珀色の嘘』として心の中に刻まれている。
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