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マゼンタ色の嘘
長距離通勤者の帰宅時は『時刻表確認』がルーチンワークになっている。「どの電車で帰ろうか?」仕事の疲れや心の余裕といった内部環境だけでなく、電車の運行状況や気温などの外部環境も考慮して、最適な経路を決断している。
朝の通勤は、いったん決めてしまうと、同じ時間、同じ車両、いつもの場所で乗り換え、見知った顔ぶれの光景を目にする。本を読んだり、スマホを見たり、考えごとをしたり、眠ったり、みな各々のスタイルで移動している。
たまに、事故などで運行ダイヤが乱れた時は、日々鍛錬してきた『電車経路の選択力』が試される。朝の通勤で想定外に体力を消耗すると、1日中、仕事のパフォーマンスが低下する。時間も浪費することになり、キャッチアップするために、必要以上に体力を使うことになる。被害は最小限に留めたい。
現状把握だけでなく、未来予測も行いながら、複数の選択肢を洗い上げ、限られた少ない情報の中、重要な決断を行う。選択を1つ誤ると、殺人ラッシュに巻き込まれたり、車内やホームで長時間放置に陥ることがある。ロシアンルーレットよりも確率を高めるために、色々と考えるが、最後は運次第になることが多い。
帰りの時間はいつもマチマチになってしまう。残業を少しでも早く終わらせようとしているので、決まった時間にならない。集中力はほぼ仕事で使い切ってしまう。
会社から駅のホームまでの間で、スマホで電車案内を確認している。各駅停車に乗るか、快速にするか、乗換は手前にするか。車両は前方にするか、後方にするか、巨大駅の階段付近を狙うか。
残業時間が前日と同じになると、コースはそのまま同じになる。
運行ダイヤが乱れると、朝と同じく、運試しになってしまう。
これがいつものルーチンになっている。
会社帰りや飲み会帰りに、同僚と電車に乗るときに、ルーチンが乱れてしまう。乗る電車や車両の選択を相手に合わせることが多い。「ここでいいんですか?」「私はどこでもいいです」と言われても、「私もどこでも大丈夫です」と答えてしまう。会話に夢中になっていたり、思考力が低下していたり、流れに任せてしまっている。
同僚と別れてから後悔することもある。なんであの電車にしなかったのか、あっちの車両にしていれば楽だったのに。
でも、結局は運次第。考えてもダメなときはダメだし。
この嘘は何色だろうか?
私は『マゼンタ色の嘘』としたい。マゼンタは犠牲の血の色。電車のボディには配色されてないかもしれないが。
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