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「ねえ、ナナト。風の姫君。君はそんなに私を責め立てるが、では、君はどうなんだ?」
「え?」
「今まで、誰かに告白したことがある? そういう経験は?」
「な、ないです……」
七都は、うつむいた。
告白したことも、されたこともない。それは事実だ。
「じゃあ、そんなにえらそうに、私に意見をしないでくれるかな」
ジエルフォートは、にやっと笑った。
そうだよね。
今の私って、きっとキディアスと同じなんだ。
ナイジェルと私の関係に気をもんでいる、キディアスと同じ……。
キディアスが七都に言いたいことは、今七都がジエルフォートに言ったこと、まるっきりそのものかもしれない。
<本当にナナトさまは、おかわいらしいですね……>
あれは、変にこだわりを持って、ナイジェルへの思いをはっきりと行動に移さない七都に対する、彼の嘆きの言葉……。
「君は簡単に告白すればいい、なんて言うけどね。今まで長年普通に接してきた相手に対してそういうことをするのは、どれだけ勇気がいるか、わかる?」
ジエルフォートが言った。
「実際には、わかりません。推測するしか……」
「かなり必要だよ。そして、その勇気の代償として、失うものが多すぎる」
「だけど……ジエルフォートさまって……私よりかなり年上ですよねえ? 私の父よりも、先生よりも、たぶん私が知っているどのお年寄りよりも、何百歳も……」
七都は、目の前に座っている、眩しいくらいの美青年に訊ねた。
「そういうことになるね。君は別の世界から来たところらしいから、この世界での長命の知り合いも、そう多くはないだろうしね」
ジエルフォートが頷く。
「つまり君は、実際の年齢に比べて、子供っぽいと言いたいのかな?」
「子供とまでは言いませんが。あなたの悩みは、たぶん、私たちの年代の者が遭遇しそうな悩みです。いわば、青少年がぶつかる悩みとういか……」
「やっぱり、子供っぽいと言いたいんじゃないか」
ジエルフォートは、カトゥースを飲み干した。七都は、二杯目を彼のカップに注ぐ。
「外見がこうだからね。中味もそれに応じてそのままだ。何百年たとうが。人間とは違うよ。ま、個人差はあるけどね」
「そういうことになっちゃうんですかね……」
「でも、私も待っているのだよ」
ジエルフォートが静かに呟いた。
「何をですか?」
「アーデリーズが発情するのを」
「はぁぁ!!???」
七都は、思わず椅子から体を起こす。
ストーフィが、七都の背中と椅子の背もたれに挟まれて、じたばたと暴れた。
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