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七都は、ロボットたちを睨んだ。
彼らのいる場所を避けようとすると、丘を降りて、大きく迂回しなければならなくなってしまう。
瞬間移動しちゃおうか?
七都は思ったが、それもまた、迂回する以上に体力を使ってしまいそうだ。
無視すれば、何も起こらない。
カーラジルトの言葉を信じる。
あの猫たちは、何もしてはこない。
さっきも何もしなかった。ただ私を囲んで、見下ろしていただけ。
スルーだ。スルー。
七都は、猫の目ナビをつぶれそうなくらいに強く握りしめ、大きく距離を取って、そろそろと猫ロボットたちの前を通る。
七都が横切っても、猫ロボットたちは無反応だった。
整列したまま、半透明のオパールのような丸い目で、遠く地平の彼方を見つめている。
その立体図形のような銀色の体が、一瞬でも動くことはない。
いったいこんな砂漠の真ん中で一列に並んで、何をしているのか。何を見ているのか。
七都は疑問に思ったが、そんな疑問はきれいに消し去ってしまわなければいけない。関わりになってはならないのだから。
猫ロボットたちの前を無事に通り過ぎた七都は、ほっと安堵の溜め息をつく。
やっぱり、何も起こらなかった。こちらが仕掛けなければ、きっと向こうも何もしてはこない。
カーラジルトは何度も無事に通り抜けたのだ。
確かにカーラジルトなら、無視しそうだよね。七都は思う。
余りじゃれたくなる代物でもない。
全然魅力的には動かないし、かじっても歯型もつかない金属だし……。
華奢なつくりに見えるけど、あれは機械なのだ。猫パンチしたって猫キックしたって、びくともしなさそうだ。
七都は、ちらと後ろを振り返る。
整列した猫ロボットたちの姿は、もうなかった。先ほどと同じように。
砂の丘には、彼らが存在したという微々たる痕跡さえ皆無だ。
また、消えた。
これ……。やっぱり、誰かにおちょくられてる?
七都は眉を寄せ、何もない白い丘を眺めた。
あの猫ロボットたちも、瞬間移動が出来るとか?
それか、誰かが瞬間移動させている。
とにかく、夢じゃないことは確実だ。
七都は、再び歩き始める。
ああいうのが、風の都に着くまで、ずっとこんな感じで現れるのだろうか。
その度に緊張して、横を通り過ぎなければならない。憂鬱だ……。
それから、しばらく歩いたところで、それらはまた七都の前に現れたのだった。
今度は違うパターンで。
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