第1章 砂の中の猫

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 砂の中から、大きな機械のオサカナでも現れるのかと思った。  カーラジルトが剣の稽古のときに出してくれたみたいな。  七都の感想が聞こえたかのように、三匹の猫ロボットは、いっせいに七都のほうを見た。  それは不気味なくらいに素早く、それでいて、さりげない動きだった。  砂の中から現れた猫ロボットも、釣り糸にぶらさがった状態のまま、七都を見つめている。  七都は、口を押さえた。  声には出していないはずだったが、七都の軽い落胆は、猫ロボットたちにしっかりと伝わったらしい。  もちろん七都がどんな感想を持とうと、それは七都の勝手に過ぎない。  彼らは彼らで、遊んでいるだけなのだ。  どのようなものが砂の中から現れようと、通りすがりの七都には関係ないし、現れたものに対して七都がどう思おうと、彼らの知ったことではない。  とはいえ猫ロボットたちは、気を悪くしたような感じではなかった。  <何か文句でも?>とか、<悪い?>といった開き直った態度でもなく、あるいは<何だよ、こいつ>というような、腹を立てたっぽい雰囲気でもない。  ただ無表情なオパールのような目で、七都をじっと眺めている。三匹とも、全く同じ角度で顔を傾けて。 (し、しまった。無視できなかった……)  七都は我に返り、猫ロボットたちに背を向けて歩き始める。  ロボットたちの視線が、背中にやんわりと突き刺さった。 (み、見られてる……。まだしつこく見ている……。でも、振り返ると、どうせ消えてるんでしょ?)  七都は、勇気を出して後ろを向く。  思ったとおり三匹の猫ロボットの姿は掻き消え、そこには砂以外何もなかった。  七都は、引き続き砂漠を歩く。  低い砂の丘を越えると、七都が来るのを待ちかねていたとばかりに、また銀色のものたちが丘の下に湧き出ていた。  七都はそれを見て、頭を抱えたくなる。  歩く速度も自然と遅くなった。  まただ……。  何かだんだん、見た目のシチュエーションが、微妙にエスカレートしているような気がする……。  最初は、寝ていた七都を輪になって取り囲んでいた。  次は、ずらっと整列していた。その次は、釣り。  そして、今度は――。  七都は、うんざり気味に、真ん前に現れた光景を眺めた。  今度は、UFOか……。
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