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それは、全く砂漠には似つかわしくない光景だった。
おそらくそれが似合うのは、色とりどりの花がたくさん咲く、手入れの行き届いた美しい庭。
あるいは、心地よい風と光に満たされた、どこかの屋敷のしゃれたテラス。
あるいは、垢抜けたインテリアでコーディネートされた、高級感溢れる明るい部屋の中だろう。
七都は、一応ごしごしと目をこすってみたが、それは消えなかった。
やはり砂漠の真ん中に、それは出現していた。
「お茶会……に見えるんだけど。どう考えても……」
七都は、呟く。
そこにあったのは、砂漠には似合わない、なごやかな光景だった。
白いテーブルと椅子が、砂の上に置かれている。
テーブルも椅子も、さりげなく彫刻の入った上品なデザインのものだ。
そして、席に着いているのは、全部で四人。いや、例の銀の猫ロボットも人数に入れるならば、六人だ。
メンバーは、たぶん魔貴族であろう人々が三人。内訳は、男性が二人、女性が一人だ。
そして、さっき円盤を抱え上げようとして腕が取れてしまった、チョコレート色の毛に黒いマントのグリアモス。さらに、銀の猫ロボットが二匹。
あの三匹もまた、魔貴族たちと同じテーブルについていた。
もっとも猫ロボットは全部同じで区別がつかないので、その二匹が円盤のそばにいた二匹と同じなのかどうかは、不明だ。
テーブルの上には、白い花が飾られている。そして、白いポットとカップ。さらに、お菓子のようなもの。
その量と種類からしても、食事会ではなく、お茶会なのだろう。
食事会となると、もっとずっと違ったシチュエーションになるに違いない。魔神族の食料は人間なのだから。七都としては、あまり想像したくもないことだったが。
七都は緊張しながら、お茶会の横を通る。
時々、穏やかな笑い声が聞こえる。
そして、陶器の触れ合う涼しげな音も。
漂ってくるのはコーヒーの香り。カトゥースだ。
いい香り……。
七都は、ふっと目を閉じる。
あのお茶会に参加して、カトゥースを飲めたら……。そしたら、もう少し元気になれるかも。
そんな思いが心に浮かんだが、七都はあわてて打ち消した。
いけない。無視しなくちゃ。
あれは、きっと幻。振り向くと消えている、砂漠の幻想だ。
それでも七都は、ちらっとお茶会のメンバーを観察してみる。
魔貴族の男女は、いずれも美しい人々だった。
宝石で髪や額を飾り、着ている服装も高価そうで、洗練されている。魔貴族の中でも、身分の高い人々なのかもしれない。
あのイケメンのうちのどちらかが、地の魔王エルフルドだったりして?
七都は思ったが、もちろん彼らをじっくり眺めることは出来ない。無視が鉄則だ。
さっきはちょっとムキになって、円盤を砂から引き上げてしまったけど、もう何もしちゃいけない。何もしない。
スルーしよ……。
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