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魔貴族たちはお茶を飲みながら談笑しているが、チョコレート色のグリアモスと猫ロボットは、黙って座っていた。機械なのだから、お茶は飲めないのかもしれない。
彼らは、明らかに全員が七都を見ていた。
そんなにあからさまな態度ではない。けれども、しっかり気にかけている、という感じだ。
たとえば、猫が無関心を装いながらも、耳だけはちゃんとこちらを向いている。そんな雰囲気。
そして彼らの間には、妙な緊張感が漂っていることに、七都は気づく。
何だろう、このピンと張り詰めたような、変な空気……。
もしかして、このお茶会のメンバー、表面的にはとても穏やかそうだけど、実は仲がよくない?
どうでもいいことだったが、七都は何となく、そんなふうに想像してみる。
七都は、彼らのテーブルがある場所を、何事もなく無事に通り過ぎた。
奇妙なお茶会は、視界から消えてしまう。
七都は深呼吸をした。
そして、念のため、振り返る。
やはりお茶会の場所には、砂の平地しかなかった。
七都の体から、力が抜ける。
もういい加減、やめてほしい……。
ずっと続くのかな、こんなのが。
退屈しのぎにはなるけど、どっと疲れる……。
けれどもすぐに、前を向いて歩く七都の唇から、幾度目かの溜め息が漏れる。
またか……。わかっていたけど。
再び、お茶会をしている人々が、砂漠に現れていた。
相変わらず、なごやかな雰囲気だ。
猫ロボットの一匹が、足をぶらぶらさせてテーブルの上に腰掛けている。
「ストーフィ、お行儀が悪いわよ」
テーブルのそばを通り過ぎるとき、七都の耳に女性の声が聞こえた。
きれいな落ち着いた声だ。
おそらくお茶会メンバーの魔貴族の女性だろう。
少女の声ではない。もっと年上。二十代半ばくらいだろうか。
(ストーフィっていうんだ、あの銀猫ロボット)
七都は、前方を見つめながら思う。
だが、テーブルに乗っかっている猫ロボットの名前がそうなのか、それとも猫ロボットを総称してそう呼ぶのかは、もちろん定かではない。
七都は、脇目も振らずに、お茶会の横を通り過ぎる。
通り過ぎたあとも、そのまま七都は砂の上を歩き続けた。
もう振り返る気にもならない。消えていることは確実だ。何の気配も感じない。
引き続き歩いていると、さらにまた七都の進行方向に、例のお茶会が現れる。
しつこいなあ。もちろん、無視だ。
テーブルの上に座っていたストーフィは、今度は黒いマントのグリアモスの膝に乗っていた。
そして、お茶会の雰囲気が先程とは微妙に違うことを、七都は感じる。
もう誰も笑っていなかった。
ぴんと張り詰めた空気に、さらにぴりぴり度がプラスされている。
お茶会のメンバーは全員、黙りこくったまま座っていた。
猫ロボットとグリアモスは最初から喋ってはいなかったが、さっきは確かにもっと機嫌よく座っていたような気がする。だが今は、困ったような様子だった。身の置き場がない、というような。
七都は構わず、その横を通って行く。
通り過ぎても、もちろん振り向かない。
彼らが消えているのはわかっているのだから。
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