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キディアスが出て行ったあと、七都は、深い深い溜め息をつく。
ストーフィが、いつのまにか七都のそばにくっついていた。
七都はストーフィに手を回して、引き寄せる。
「あー、びっくりした。まじで、ちょっと怖かった」
ストーフィが、軽く、こくんと頷いたような気がした。
「君もびっくりした? そうだよね。真に迫ってたもの」
七都はストーフィを抱きしめて、ベッドに体をゆったりと横たえた。
「でも、考えてみれば、キディアスが私に何かするはずもない。何かしたら、それはナイジェルに対する裏切りになるんだもの。そういう点では、却って信頼できる人なのかもしれない」
七都は呟いた。
「だけど、キディアスって、やっぱり、『ドS』だよね。シャルディンは、単にいたずらでおちょくるだけだから、かわいげがあるけど、キディアスは、ほんっとリアルで、怖いもん」
ストーフィが、深く頷いたように見えた。
あれ?
言葉の意味、わかって頷いたの?
「……超ドS」
七都がストーフィに向かって呟くと、ストーフィは、オパール色のまんまるい目で、七都をじとっと見つめ返した。
「ところで、やっぱり君って、抱き心地が悪いよね。なんせ金属だものね。エルフルドさま……もといアーデリーズに、毛皮のコートとか作ってもらえるよう、頼んでみようか? それか着ぐるみもいいね。ネコ耳付きの。きっとかわいいよ」
ストーフィは、気を悪くしたのか、あきれたのか、それとも、毛皮のコートやネコ耳付きの着ぐるみを身につけている自分を想像したのか、真っ直ぐ天井に視線を止めつけた。
「私、しばらく寝るね。休息が必要なんだって。キディアスのおかげで、よく眠れそうだ。おやすみ……」
七都は、目を閉じる。
ストーフィは顔の向きを変え、いとおしげに七都を眺めた。
それから、七都を守るかのように、ぴったりと寄り添った。
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