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「ジエルフォートさまの幼なじみ……。興味はありますね。会ってみます」
「そう。よかった。彼も喜ぶよ。この部屋の並びにある客間にいる。待ちくたびれてるんじゃないかな。一緒に来た私からも、ほったらかしにされてしまっているわけだから」
それからジエルフォートは、いつのまにか七都にくっついて寝室を出てきていたストーフィを見つける。
ストーフィは、七都の隣に座っていた。両手には、七都が放り出した鏡を持っている。
「今度は鏡か?」
ジエルフォートが、あきれたように呟いた。
「やはり、中を開けて覗いて見る価値はありそうだ。ばらばらに分解してしまおうかな」
ストーフィは、ジエルフォートの恐ろしいセリフを聞いて、七都と椅子の背もたれの間に、頭だけ突っ込んだ。
「ジエルフォートさま。なんでストーフィを際限なくアーデリーズに送るんですか?」
七都は、ストーフィの頭をクッションにして、ジエルフォートに訊ねた。
「賑やかになっていいだろ? 彼女が、この屋敷も城も殺風景で息が詰まるって言うから。こういうものがあっちこっちで動き回っていたら、気がなごむだろうしね。第一、楽しい」
理系男子っぽい答えかもしれない。
筋が通ってるし、もっともな理由……。
でも、ジエルフォートさま。
本当は、別のもっと単純な理由がおありでしょう?
「気がなごむし、楽しいかもしれませんが、それにしても多すぎませんか?」
「一度に沢山出来るからね。大量生産してるんだ。私の研究室に積んでおいても仕方がない。だったら、全部彼女に送るほうがいいだろ?」
「そりゃあ、そうかもしれませんが……」
「何なら、風の城にも送ってあげようか?」
「け、結構ですっ!!」
七都は、ジエルフォートの申し出を慌てて断った。
『風の魔王リュシフィン様気付 阿由葉七都様』
そういうことで、ストーフィなんかをしこたま送られたら……。
七都は、無数のストーフィに囲まれて途方に暮れているリュシフィンの姿を、おもわず思い浮かべてしまう。
「またまた、拒否された……」
ジエルフォートが、ぼそりと呟いた。
「あのう、ジエルフォートさま」
七都は、ジエルフォートをじっと見上げた。
私には関係のないことだし、よけいなおせっかいになっちゃうかもしれないけど。
でも、訊いてみよう。
七都は、決心する。
「ん?」
ジエルフォートが、薄いブルーが溶けた乳白色の目で、七都を見つめ返した。
「ジエルフォートさま。エルフルドさまのこと……いえ、アーデリーズのこと、好きですよね?」
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