第5章 二人の使者

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 七都は単刀直入に訊いたつもりだったのだが、ジエルフォートは、わざとなのか、それとも天然なのか、別の角度から答えた。 「もちろん。彼女と一緒に仕事をしていると、楽しいよ。いろんな着想を提供してくれるし。彼女といると、様々なことがはかどる」 「そういう意味じゃなくて。異性として好きですかって聞いているんです」  ジエルフォートは、びっくりしたように七都を凝視する。  なんだ、天然か。  もしかしてジエルフォートさま、自分で気づいてないの?  七都はあきれて、軽く溜め息をつきたくなる。  だが、ジエルフォートは、とても真面目な表情をした。  そして、少し姿勢を正す。 「好きだよ」  彼が言った。はっきりと、強い口調で。 「やっぱり、そうなんですね」  七都は、嬉しくなった。  じゃあ、じゃあ、両思いなんだ。二人とも、お互いのこと好きなんじゃない。  なんだ。別に私がやきもきしなくても、二人の仲は自然に進んで行くよね。 「アーデリーズも、ジエルフォートさまのこと、好きですよ、たぶん」 「そうなのか?」  ジエルフォートは、再び驚いたような顔をする。  あ。それは知らなかったんだ。あらら。 「ジエルフォートさま。告白されたらいいのに」  七都が言うと、ジエルフォートは眉を寄せた。 「告白? 私がか?」 「そうですよ」 「そんなことをしたら、今までの彼女との生活が、壊れてしまうじゃないか」  ジエルフォートが、この上なく真剣な様子で言った。 「は?」 「研究室での彼女との楽しく有意義な時間が、そういうことをすることによって、よそよそしく気まずい、別なものになってしまう。もう今までのようには、彼女と過ごせなくなる」 「だけど、好きなんだったら、自分のお気持ちを伝えられたほうが……」 「告白はしないよ」  ジエルフォートは、七都の言葉を遮って、きっぱりと言った。 「これからも、ずっとね」 「そんなの、ひどい!!!」  七都が叫ぶと、ジエルフォートは目をぱちくりさせて、七都を眺めた。  彼の生涯において、誰かに「ひどい!」などと叫ばれたことが、なかったのかもしれない。 「アーデリーズも、そうかもしれません。あなたとの今の関係を壊したくないって思っているのかも。だけど、本当は、アーデリーズは待ってるんです。あなたが好きだって告白してくれるのを!」 「そんな、まさか……」  ジエルフォートは、くすっと微笑みを浮かべる。 「わ、笑わないでくださいっ!! 私は、真面目に話してるんですっ! あなたはアーデリーズに告白しなきゃだめです! あなたのほうから言ってあげないと! アーデリーズは一見あんな感じだけど、本当は、とても素直で気弱でやさしい女の子なんですっ」  七都が言うと、彼は慌てて微笑みを消去した。  それから、咳払いをひとつして、七都に向き直る。
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