第5章 二人の使者

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「どこで会うの? 謁見の間とか?」  七都が訊ねると、ラーディアがおかしそうに笑う。 「この屋敷には、そういう堅苦しいものはありませんよ。お城にはありますけれどね」 「ナナトさま。ここは民家ですよ」  キディアスが、あきれたように言う。  ミンカって。ここが?  ここが民家なら、サイズ的には、うちはさしずめ鳥かごだ。  思わず、「鳥かごかぁ」と頭をかきながら苦笑している父の姿が浮かんだ。 「いちばん落ち着けそうな客間を選ばせていただきました。ナナトさまのお知り合いだそうですので、ごゆっくりくつろいで、お話をなさってください」  ラーディアが一つの扉の前で立ち止まり、手を上げる。  扉が、ひとりでに開いた。  そこは七都が使っている客間よりもさらに広い、ベージュと茶色を基調にしたシックな部屋だった。  壁には、どこかの異世界の風景らしき絵がかけられ、ガラスで出来た木のような大きなオブジェが置かれている。  中央には、深い葡萄色の椅子とテーブル。  そして、その前で、ひとりの人物が、丁寧に頭を下げていた。  白いフード付きマントの人物。  フードは下ろされ、赤銅色の豊かな髪が、渦巻くようにこぼれている。  七都はキディアスにエスコートされ、その人物の前に立った。  誰だっけ、この人。  でも、この髪の色、見覚えがある。  どこで見たんだったっけ。 「あなたが、使者さん?」  七都は、その人物に声をかけた。 「ナナト。約束を覚えていますか?」  その人物が頭を下げたまま、明るい声で訊ねる。 「え?」 「舞踏会で私と踊ってくださると。お約束いただきましたよね。踊れるようになりましたか?」  その人物が顔を上げる。  ネイビーブルーの目。薄紅色の唇。  七都に親しく微笑みかける、美しい若者。それは――。
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