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「ジュネス……!!」
ジュネスは、七都の手を取って、唇を付けた。
キディアスは、ああ、この人か、という納得した顔つきをして、彼の様子を見守る。
キディアスに抱かれたストーフィは、<ダレ、コノヒト?>と言いたげに、キディアスと七都とジュネスを順番に眺めた。
「ああ、ジュネス。あなただったの……」
「ジエルフォートさまからあなたのことをお聞きして、来てしまいました」
ジュネスが笑う。
ジュネス――。 シャルディンの前の主人で、光の魔王の親戚。
七都のことを心配し、一緒に魔の領域に行くことを申し出てくれた人。
え。ちょっと待って。
光の魔王さまの親戚ってことは……ジエルフォートさまを知ってるってことだよね?
「ジュネス。ジエルフォートさまの幼なじみって、もしかしてあなたなの? 幼なじみに協力してもらってこちらに来たって……」
「ジエルフォート……さま?」
ラーディアが、怪訝そうな顔をする。
「そうです。扉の向こうの地の都に行きたいとおっしゃったので。私もあなたにお会いしたかったこともあり、二人で、ジエルフォートさまの使者として、こちらに来ることにしたのです」
「あ、あの……」
ラーディアが、遠慮がちに声をかけてくる。
七都は、彼女のほうを向いた。
「ごめんね、ラーディア。もうばらしちゃってもいいよね、ジュネス。彼女はエルフルドさま付きの女官で、ここの責任者なんだもの。知っておかなきゃならないと思う」
「そうですね。私も心苦しいです。この方をだますような真似をするのは」
ジュネスが言う。
「どういうことですか?」
ラーディアが眉を寄せた。険しい女官の顔になっている。
「つまりね。もう一人の、散策に出かけちゃったという使者の人は、ジエルフォートさまなの」
七都が言うと、ラーディアは、両手で口を覆った。
かなり驚いている。金色の目が、猫に負けないくらいに大きくなっている。
「ついでに白状しちゃうと……エルフルドさまのお相手は、ジエルフォートさまなんだよ」
ラーディアは、大きく息をした。
そして、たちまち自分を取り戻す。見事な切り替え方だった。
「そうなのですか。それは大変です。ジエルフォートさまをお迎えする準備をしなければ!」
ジュネスは、首を振った。
「ラーディア。そういうことが、ジエルフォートさまはお嫌いなのです。どうか、ただの使者としての応対を。正体は内緒にしておいてください」
「でも、ジュネスさま。それでは、あまりにも……。私の立場としては、ほうってはおけません。私に何もするなとおっしゃられるのですか?」
さすが女官をしているだけに、しっかりしてる。
七都は、感心する。
たぶんラーディアも、私とそんなに歳は変わらないだろうに。
私には、とても女官なんて務まらない。
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