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(彼、へこんでるかも……)
七都は、キディアスのことが、ちょっと心配になったりする。
彼は、七都が王族であることを知ってしまったわけだから、それまで七都に対して行ってきた自分の態度を反省せざるを得ないだろう。
自分の主君の親戚であり、正妃になれる資格を持っている姫君に、愛人になれなどと言ってしまったのだ。
プライドの高そうな魔貴族のキディアスは、七都が想像するよりも、はるかに落ち込んでいるかもしれなかった。
キディアス、ナイジェルのところに帰ったかな。
私なんかにストーカーやってる暇があったら、彼のそばにいてあげてほしいよね。
七都は、色が変わりつつある空の下をゆっくりと歩く。
砂漠の中だというのに快適だった。寒くも暑くもない。吹き渡る風も心地よい。
砂漠というのは、昼夜で気温の差が激しく、過酷な場所というイメージがあったが、ここではそういうこともないらしい。
おそらくここは、気温もコントロールされている。
魔神族が気持ちよく過ごせるように、細かいところまで設定されているのかもしれない。
いくつか砂の山を越えると、遠くに半透明の細長い物体が現れた。
水晶で出来た箸のようなものが一本、砂に斜めに突き刺さっている。そんな感じだった。
もちろんそれは、遠くから見るから箸に見えるのであって、実際は巨大な柱のようなものに違いない。
近づくと水晶の箸は、やはり大きくなった。
半透明の石で出来た塔のような柱。
砂の中に埋まった、オブジェか何かのようにも見える物体だ。
表面は磨かれたようにすべすべで、規則正しい模様で覆われている。
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