19-11

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19-11

「…ありがとう。ものすごく好みだし…」 「だし?」 「……ちゃんとお揃いっぽいね」  顔を上げて、俺の胸元の十字架にそれを並べる。頬に少し赤みがさしていて、すごく綺麗な笑顔だ。  良かった、喜んでくれた。俺はほっと息をつく。 「使うよ、毎日」 「これ」  指でその十字架をつまんで、裏に返して見せる。 「あ、イニシャル入ってるんだ。…この真ん中のナナブンノニジュウヨンってなに?」 「ナナブンノニジュウヨンじゃなくて、トゥエンティフォーセブン」 「英語だ」 「24時間、7日」 「どういう意味?」  いつでも、だけど。口にしようとすると、割と気恥しい。 「だから…一日に24時間、一週間に7日」 「…えーと、てことは、一年に365日」  これは伝わったと思っていいはず。 「そういうこと」 「カッコいいじゃん」  気に入ってくれたっぽい。安心した。  龍樹は俺にそれを差し出す。 「お前が着けてよ」  俺はそれを受け取って、留め金をはずす。龍樹の首にチェーンを回して、後ろで留めてやる。 「じゃあ、さっきのもう一回」 「…言わない」  俺がそう答えると、龍樹は頬をふくらませた。 「何でだよ」  もう一度、しっかり龍樹を抱きしめる。 「よく聞いとけよ。もう一生言わねぇかもしれないからな」 「うん?」  好きだ、って言葉じゃ足りない。  この世界で、一番大切で、一番必要な龍樹には。 「……愛してる」  龍樹が驚いて息を飲んだのが、耳元から伝わって来た。 「…玲次」  龍樹の腕が、俺の背中にまわる。 「もう一回言って」 「言わないって言っただろ」 「聞きたい。今日くらいサービスしてよ」 「でーら安売りだが」  名古屋弁も出るわ。スーパーのタイムセールみたいだな、おい。 「高く買うから。言って、ほら」  こいつが聞きたいなら、仕方ないな。  今晩くらいはたくさん甘やかしてやろう。 「愛してる」  甘いケーキも楽しんで、甘い時間も龍樹に贈ろう。  クリスマスだから。
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