9人が本棚に入れています
本棚に追加
19-5
「つまみとか、雑な言い方するからスルメとかだと思うじゃん」
「そんなしゃれた言い方知らねぇよ」
「書いてあるだろ」
にこにこしてると、やっぱり可愛いよな。笑ってる龍樹より可愛い生き物を、俺は見たことがない。
「こっちで食うか?」
「そうしよ」
いつも食事はキッチンカウンターの脇の小さいダイニングテーブルで食うけど、何となくリビングの方のテーブルの方がそれっぽい気がする。よくわからんけど。
龍樹はチキンを皿に移してレンジに入れる。
俺はオードブルのパッケージの蓋を開ける。
「これも皿に移すか?」
「それはそれでいいだろ。ちゃんと盛り付けてあるし」
「ふーん」
それならそれで。
「お前、晩飯これで足るか?」
「うーん。足らなかったらパスタ茹でるよ」
「そうか」
自分が呑みながら食う分量しか頭になかったな。これはちょっと失敗だ。次への課題としよう。
「ケーキはどんなやつ?」
龍樹がこっちへ戻って来て、ケーキの箱を開ける。
「イチゴショートじゃん! 美味しそう」
「ショートじゃないだろ。丸いぞ?」
「ショートって、小さいって意味じゃないからな?」
「そうなのか?」
小さい、ならスモールだろ? って長年思ってた。そうか、ショートはスモールの間違いじゃなかったのか。
「イチゴと生クリームのケーキは、大きさ関係なくイチゴショート。何でなのかは僕も知らないけど」
「知らないのかよ」
「知るわけないじゃん」
一緒に笑う。めちゃめちゃどうでもいいけど、龍樹はちょっとはしゃいでる様子だし、喜んでるみたいだから良しだ。
「あ、ロウソク入ってる」
「クリスマスもロウソクつけるのか」
「つけないでしょ」
「入ってるし、つけとくか」
「何でだよ」
そう言いながらロウソクの袋を開けて、ぐるりと立てる。それから、レンジにチキンを取りに行ってテーブルに運んでくる。
俺はビールとコーラを持って来る。缶とペットボトルのままだけど、まあいいだろう。
「玲次、ライター」
「あいよ」
テーブルの隅にタバコと一緒に置いてあったライターを取って、火をつける。
最初のコメントを投稿しよう!