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19-6
ロウソクの先に近付けると、ぽっと火が移る。一つずつ火を移してると、龍樹は部屋の灯りを消した。
暗がりの中で、ロウソクの光がキラキラと煌めいている。
龍樹は俺の隣に座って、両手で頬杖をついてそれを眺める。
「キレイだなぁ」
龍樹の肩を抱き寄せる。龍樹は俺の肩に頭を預けてくれる。灯りがロウソクってだけで、ちょっと特別な気分になるもんだな。いつもより、空気が穏やかな気がする。
「これ、どのタイミングで消そうか」
「歌うか?」
「何を」
「ハッピーバースデー」
「キリストの誕生日だから? それ、なんか違う気がする」
龍樹はくすくす笑う。
「このままにしときたいけど…」
ロウソクはどんどん短くなっていて、溶けたロウがケーキの上に垂れそうだ。
「そうもいかないか。じゃ、消そ?」
「どうぞ」
「一緒に消そう。どっちの誕生日でもないんだし」
「ああ」
「じゃ、せーの」
龍樹の掛け声で、同時にロウソクに息を吹きかける。火はゆらゆらと揺れると、呆気なく全部消えた。
龍樹は俺の腕からするりと抜けて、灯りをつけに行く。
「じゃあ、チキン食べよう!」
そう言いながら、ウェットティッシュを持って来て座る。
「それは?」
使い道がわからずに聞くと、何故かドヤ顔で答えてくれる。
「絶対、手とか顔汚すだろ、これ」
言われて改めてチキンを見てみると、タレが絡めてある。これは汚すな。ちゃんとそこまでお見通しか。
「だな」
「いただきます」
「いただきます」
一緒に手を合わせて、いただきますを言う。龍樹は早速チキンを手に取って齧り付く。俺はとりあえず、ビールを開ける。
「結構美味しいね。コンビニも捨てたもんじゃないなぁ」
「そうか?」
俺も自分の分を取って食べてみる。そんなに味の方は期待してなかったけど、肉も柔らかいし、それなりに美味い。
「ほんとだな。いける」
「ぱさぱさしてるかと思ったけど、しっとりしてる」
そう言う龍樹の顔を見ると、案の定口元にタレがついてる。
「ついてんぞ、そこ」
指差すと、チキンを皿に置いて両手を見る。完全に子どもだな。手も汚れてる。
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