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4-2
切なく掠れる、苦しそうな声。すごく良いと思うんだけど。
目線を上げて、龍樹を見る。
「どう?」
龍樹は腕を組んで、俺を睨む。
「いい」
「良くない」
「どこが」
「わかるだろ」
「わからん」
昨日からもう何回目だ、このやり取り。エンジニアさんも呆れてそっぽ向いてコーヒー飲んでる。
すいません、ほんとに。
「だからさぁ、何て言うか…ほら、わかるだろ?」
「言語化しろ。わからん」
「こう、ニュアンスじゃん、こんなの」
「それをどうにか伝えろ。俺はこのテイクでいいと思う」
「僕は良くないと思う」
「だから、どこがだ」
「うーん…」
歯ぎしりをして唸る。歌詞書くくせに、こういうことを伝えるのは下手なんだよな。
「……だから、僕を殺して、のところが…」
「ところが?」
「…何か違う」
「違うと思うなら、合ってると思うので歌えよ」
「正解がわかったら、とっとと歌ってる!」
だよな? 何でこんなにごちゃごちゃ言ってるかって言うとだ。
「わかんないから、お前も考えろ!」
何故これしきのことで、こんな細かい喧嘩をしなきゃなんねぇんだよ。
喧嘩はコミュニケーションだとか、喧嘩するほど仲がいいとか、そういうのは望んでねぇんだよな。お互い、避けられるなら避けたいと思ってるよ。もういい年なんだし。
でもどうしてか、すぐにこうなるんだ。
「考えるけど、どうしたいのかがわからん」
「どうしたいのかを考えてよ」
俺的にはOKテイクだから、そう言われてもなぁ。これで良いとしか言えない。
腕を組んで、一応考える。
「…辛い、苦しい、の他にキーワードが欲しい」
「他にか」
こいつの表現力は俺以上だと思ってるから、俺よりこいつの方が絶対にそういうことは出て来そうなんだけど。
歌詞書いたのだってお前じゃねぇか。
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