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19-10
「もう一回」
仕方ない。顔見えないし、言える。
「好きだ」
「もう一回」
「まだ言うのかよ。聞こえてるだろ」
「うん。もう一回」
「…もう一回?」
「何十年ぶりに聞くんだからさ。言えって」
そうか。何百回言っても足りないよな。顔見て言うか。照れるけど。
腕を弛めて、顔を見る。嬉しそうに笑みを浮かべてる。
「…龍樹」
「はい」
ダメだ、顔見ると緊張する。
「ちょっと待て」
「は?」
「いいから」
龍樹を置いて立ち上がり、ベッドルームに行く。俺専用に置いてある棚の引き出しから、青いリボンをかけてもらった箱を取り出す。
喜んでもらえますように。
ちょっと祈る気持ちでそれを握りしめて、リビングに戻り、龍樹の前に座った。
「……」
龍樹は俺の手にある箱を見て、プレゼントだってことは察したんだろう。手元と顔を何度も見比べる。
「すげぇ遅くなったけど。お返し、だ」
「お返しって…」
他に何か上手い言い方はあったのかもしれない。でも、そんな言葉が俺の中にはない。
龍樹の手に、それを渡す。
受け取った龍樹は、瞬きもせずに俺を見つめる。
「これもらったのに、それきりになってたから」
今もかけている、龍樹にもらったネックレス。気持ちを込めて送ってくれたこれに、きちんと返すのは今だ。
龍樹はようやく頷いて、ラッピングを解く。
「…え、うそ」
箱を開けた龍樹は、そうぼそりと呟くと黙り込んだ。
趣味に合わなかっただろうか。それとも、喜んでくれてるんだろうか。下を向いて箱の中をじっと見ているから、表情がわからない。
少しの間、そのまま箱の中のネックレスを見つめ、それからそっと丁寧に取り出す。
「……ほんとに?」
「あ…うん。どう、だ?」
「ヤバい…」
ヤバいってどうヤバいんだ。いい方が悪い方か。
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