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「最近は結構静かに出来るようになって来たからな。そろそろいいかと思って」
「そうですか。現地ではしゃがないといいですね」
「大丈夫だろう。次の日はあいつの誕生日だし、ゆっくりして来るよ」
「じゃあ25日の方ですか」
「ああ」
芳之の誕生日は12月26日だ。クリスマスと連続しているんだから、この二人にとっては特別な二日間なんだろう。
クリスマスに誕生日か。
俺は苦手なんだよな。そういうのが。小っ恥ずかしいっていうか。
今までそういうことをして来なかったから、今更どの面下げてっていうか。
龍樹とは、付き合い出してから27年半になる。でも、今まで一度も特別なことをしたことがない。
「レイジはどうするんだ? 今年は流石に何かするんだろう」
「う…」
そう、流石に、なんだよな。
「また家出されるぞ」
「…ですかね」
去年のクリスマスイブ、俺のソロライブの後に忘年会を入れたら、龍樹は激怒してプチ家出しやがった。
プチっていうか、名古屋の友達の家まで新幹線で家出したんだから、夕方に帰って来たとはいえ、そこそこ立派な家出だ。
毎年特別なことはしてないんだから問題ない、と思ってたのは俺だけだったみたいだ。
「今年はイブも当日もスケジュール入ってないんだから、何かしてやれよ」
「そうですね…」
「ホテルかレストラン紹介しようか」
「いや、そういうのは…」
恥ずかしい。それは相当恥ずかしい。どんな顔してあいつに「ホテルのディナー予約した」って言えばいいんだ。絶対「はあ?」って言われる。
「何か考えてやってるのか?」
「何も考えてないですよ。まだ10月だし」
「予約が必要なところは、もうそろそろ埋まっていくぞ」
「そうですねぇ」
とは言え、長年習慣になかっただけに、急には思いつかない。
近所の白木屋じゃダメか。予約いらないだろうし。
元々、龍樹は記念日が好きそうだ。付き合い始めた年には、俺に誕生日もクリスマスもプレゼントをくれたんだった。だけどその後、俺があいつの誕生日をスルーした時に、とうとう喧嘩になった。
俺もまだ高校生の生意気盛りだ。当時のバンドもそれなりに人気があって、随分背伸びしてた。クリスマスだの誕生日だの俗っぽいことで騒ぐのはヴィジュアル系としてダサい、とかって思ってたんだよな。
結局、俺がメジャーデビューして東京へ出て遠距離恋愛になるまで、毎度同じことで喧嘩を繰り返した。
あいつも面倒になったのか、一緒に住むようになって暫くしたら、何も言わなくなった。
「俺で良かったらいつでも相談に乗るよ」
「ありがとうございます。お願いします」
つってもなぁ。サキさんとは財力が段違いだからなぁ。
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