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 えっ? こういうの好きなのか?  高級感のあるコースディナーと、海上からの夜景。無理だ、そんなもん恥ずかしい。 「地中海とかじゃねぇんだから」  俺がついそう言うと、龍樹は目だけで俺を見る。やべぇ。ほんとにこれ行ってみたいとか思ってたのか? 「…こんなもん人気あんのか」 「みたいだよ?」 「ふぅん」  俺はテーブルに置いてあったタバコを一本取り出してくわえる。  画面は移り変わって、今度はヘリだ。空中夜景と洒落込むわけだな。 「お前、これ無理だろ」  龍樹はにやにや笑って俺に言う。 「いや? 毎日でも乗りたいね」 「嘘つけよ。泣くだろ」 「泣くわけねぇだろ」  軽く頭を小突いてやると、あははと笑う。  必要もねぇのにヘリに乗るヤツの気持ちは、俺には一生わからん。  レポーターが夜景が綺麗だとはしゃいでるけど、山の上からでも見ろ。  続いて出て来たのは、でっかいリムジン。ビロード張りかなんかの内装で、シャンパンをキメるのか。そんなもんで都内走っても、渋滞に巻き込まれるだけだろ。景色見たって東京なんだし。 「…いろんなプランがあるんだなぁ。すごい業界だね」  立てた両膝の上に顎を乗っけて、そんなことを言いながらもやっぱりテレビを見てる。  喉元まで「バカバカしい」って言葉が出かかったのを、俺は何とか引っ込める。見てるってことは、興味あるってことなんだろう。今ここでそれを否定したら、改めてがっかりするだろうし、へそ曲げるかもしれない。  かと言ってだ。俺はこんなもんには付き合いきれねぇ。もったいないとしか思えない。  もうちょっと現実的に、美味い酒とか…いや、龍樹は呑めないから、酒じゃなくて飯でいいんだけど、そういうもんとか何か、別の選択肢ないのか。 「ディズニーも混むんだろうね」 「あそこはいつも混んでんだろ」  龍樹が見てる画面はディズニーランドになってる。それもちょっと勘弁してくれ。修学旅行以来行ったことねぇよ。  そもそも、こいつとどこか出かけるってのがあんまりないんだよな。カラオケはちょいちょい行くけど、それ以外だと服買いに行くとか、そこらに飯食いに行くくらいだ。  サキさんは年に何回か芳之を連れて旅行に行ったり、ディズニーランドに連れてったりしてる。ああいうのがいいんだろうか。グアムとか連れてきゃいいのか? 「だろうね。修学旅行でしか行ったことないけど」  それは、俺に対するイヤミなのか、ただの事実なのかどっちだ。 「ま、僕には関係ないか」  そう呟くと、こっちに顔を向けた。 「で、今日の芳之くんどうだった?」 「ああ、流石完璧だった。すげぇいいよ」
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