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2-2
えっ? こういうの好きなのか?
高級感のあるコースディナーと、海上からの夜景。無理だ、そんなもん恥ずかしい。
「地中海とかじゃねぇんだから」
俺がついそう言うと、龍樹は目だけで俺を見る。やべぇ。ほんとにこれ行ってみたいとか思ってたのか?
「…こんなもん人気あんのか」
「みたいだよ?」
「ふぅん」
俺はテーブルに置いてあったタバコを一本取り出してくわえる。
画面は移り変わって、今度はヘリだ。空中夜景と洒落込むわけだな。
「お前、これ無理だろ」
龍樹はにやにや笑って俺に言う。
「いや? 毎日でも乗りたいね」
「嘘つけよ。泣くだろ」
「泣くわけねぇだろ」
軽く頭を小突いてやると、あははと笑う。
必要もねぇのにヘリに乗るヤツの気持ちは、俺には一生わからん。
レポーターが夜景が綺麗だとはしゃいでるけど、山の上からでも見ろ。
続いて出て来たのは、でっかいリムジン。ビロード張りかなんかの内装で、シャンパンをキメるのか。そんなもんで都内走っても、渋滞に巻き込まれるだけだろ。景色見たって東京なんだし。
「…いろんなプランがあるんだなぁ。すごい業界だね」
立てた両膝の上に顎を乗っけて、そんなことを言いながらもやっぱりテレビを見てる。
喉元まで「バカバカしい」って言葉が出かかったのを、俺は何とか引っ込める。見てるってことは、興味あるってことなんだろう。今ここでそれを否定したら、改めてがっかりするだろうし、へそ曲げるかもしれない。
かと言ってだ。俺はこんなもんには付き合いきれねぇ。もったいないとしか思えない。
もうちょっと現実的に、美味い酒とか…いや、龍樹は呑めないから、酒じゃなくて飯でいいんだけど、そういうもんとか何か、別の選択肢ないのか。
「ディズニーも混むんだろうね」
「あそこはいつも混んでんだろ」
龍樹が見てる画面はディズニーランドになってる。それもちょっと勘弁してくれ。修学旅行以来行ったことねぇよ。
そもそも、こいつとどこか出かけるってのがあんまりないんだよな。カラオケはちょいちょい行くけど、それ以外だと服買いに行くとか、そこらに飯食いに行くくらいだ。
サキさんは年に何回か芳之を連れて旅行に行ったり、ディズニーランドに連れてったりしてる。ああいうのがいいんだろうか。グアムとか連れてきゃいいのか?
「だろうね。修学旅行でしか行ったことないけど」
それは、俺に対するイヤミなのか、ただの事実なのかどっちだ。
「ま、僕には関係ないか」
そう呟くと、こっちに顔を向けた。
「で、今日の芳之くんどうだった?」
「ああ、流石完璧だった。すげぇいいよ」
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