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     *◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*◇*◆*  随分遠くから着信メロディが聞こえる。それは徐々に大きくなってきて…。  …いや、頭のすぐ上じゃねぇか。  ヤバい、ぐっすり寝てた。  慌てて手を伸ばして、画面を見る。 「和馬さん…」  名古屋の大先輩、ケルベロスの和馬さんからだ。急いで画面をスワイプして出る。 「おはようございます」 「何だレイジ、寝てたのか」 「すんません…」  56歳という御歳にして、バーのオーナーでもある和馬さんはいつも明け方近くに寝るはずなのに、ちゃんと規則正しく起きてランニングするって言うから頭が下がる。 「いやいいよ。頭は起きたか?」 「はい、起きました」  低血圧の俺でも、流石に和馬さんの声を聞いたら目が覚める。  公私共に世話になってるからな。 「今年の年越し、スケジュール入ってるか?」 「大丈夫ですよ」 「じゃあ龍樹くんも」 「はい」  ユニットを組んだことは報告したし、何より龍樹の親友が、和馬さんのパートナーのしおんくんだ。俺が話した以上のことも伝わってるだろう。その縁で去年からケルベロスには良くしてもらってる。 「今年のカウントダウンも出てくれるか?二人も頭数にカウントしてるんだけどよ」 「ありがとうございます。喜んで」  去年、和馬さんのメタルバー、サンダー&ライトニングのカウントダウンで開催されたトリビュートイベントに呼んでもらった。俺も龍樹もメタルには詳しくないんだけど、かなり楽しかった。  一晩中セッションバンドが入れ替わり立ち替わり色々な曲をプレイするのは、客で行っても楽しいだろう。 「そんなら頼んだ。また曲決めたら連絡するけど、やりたい曲あるか?」 「そうですねぇ…」  目は覚めたけど、そこまで頭は回らない。和馬さんの守備範囲、NWOBHMと呼ばれるメタルジャンルにはさほど詳しくない。でも、去年は俺はANTHEM、龍樹はXだったから、そこからはずれててもメタルならいいはずだ。 「どっちかって言えば、またジャパメタの方がいいです」 「ラウドネスとか、またANTHEMあたりか」 「そうですね。その辺なら多少聴いてるんで」 「龍樹くんはSHOW-YAならどうかなって考えてるんだけど」
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