9人が本棚に入れています
本棚に追加
3-2
「SHOW-YAですか!?」
これはまた意外な線で来たな。ガールズバンドか。
「ああ」
「面白いですね、それ」
それなら、あいつも知ってそうだ。
「だろ? 考えてみるわ。レイジはジャパメタ希望な」
「ジャパメタじゃなくてもいいですよ」
12月に入れば、1曲や2曲コピーする時間くらいはとれるはずだ。せっかくだから、勉強の為にやったことのない曲もいい。
「考えとくよ。あっ、そうだ。ベースじゃなくてギターで」
「えっ? ギターですか?」
一応、俺の本職はベースだ。ベースに転向して25年。自分でもそろそろベテランって言ってもいいかと思う。
「おう。雄貴がお前とツインギターやりたいって言ってたからな」
「えっ!? 雄貴さんがですか?」
ケルベロスのギタリスト、雄貴さんが俺をツインギターの相方に指名してくれたのか? 光栄だけど、責任重大だ。
「ああ。大丈夫だろ? 新ユニットはギターだって言ってたじゃねーか」
「頑張ります」
雄貴さんが俺のギターを聴いてくれたのって、3月にやったルージュレイズの再結成の時だよな。あれで声掛けてくれるとはありがたい。
「で、龍樹くんは元気か?」
「元気ですよ。会社とレコーディングで忙しくさせちゃってますけど」
「お前が誘ったんだから、心配だろうけどさ」
声に出ちゃってたかな。心配してんの。あいつの体が弱いわけじゃないけど、俺より睡眠時間少なくなってるから、それだけでも心配だし、ちょっと悪いなとは思ってる。
「龍樹くんが自分でやるって決めたんだから、もうお前が心配するとこじゃねーぞ?」
「そうですよね」
あいつもミュージシャンなんだ。俺が誘ったのはきっかけに過ぎなくて、この音楽をやるって決めたのはあいつ自身なんだ。それは、俺が恋人だからなんてくだらない理由じゃなくて、俺と音楽を作りたいっていうミュージシャンの確かな意志のはずだ。
イヤならイヤだって、あいつならはっきり言うはずだからな。
「ま、仕事以外のとこではちゃんと大事にしてやれよ? また家出して来たら保護するけど」
和馬さんは笑う。そう、去年のクリスマスイブ家出の行先は、しおんくんの家。つまり和馬さんの家でもある。
その節はほんとに申し訳なかった。
新婚家庭初めてのクリスマスイブに水をさすなんて、とんでもないことしてくれたよ。
原因は俺だから、俺が悪いんだけど。
「何とか家出は阻止しますよ」
「阻止じゃなくて、家出しなくてもいいようにしてやれよ」
「あー…まあ考えては…」
いるようないないような…。昨夜見たテレビの画面が頭の中に浮かび上がる。あんなしょーもなく恥ずかしいことしなきゃいけないのか?
「…和馬さんは、クリスマス何かするんです?」
「うん? 今年は店あるから、店のクリスマスイベントだな」
そうだ、去年は休日だったから龍樹も朝っぱらから家出したんだし、和馬さんたちは自宅ではクリスマスイブだったんだ。
ってことは、今年は龍樹も仕事か。昼間どっか出かけるとかの企画は除外だな。
最初のコメントを投稿しよう!