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もう一度、ゆっくりと箱の中身を検分すると、ネガと一緒に入っていたメモの意味も分かる。恐らく観測や測定の記録の一部や、その走り書きなのであろう。アツヒロは紙を手に取って眺めたり、ひっくり返したりした。ところで、
「あれ?」
書き付けに紛れるようにして、写真が入っていた。ネガではなく現像されている写真は少なかったのもあるが、アツヒロは少々面食らった。それがポートレートだったからだ。
いや、ポートレート自体は写真の王道ではあるが、ここではむしろ異質だった。他の、現場写真としか言えないような風景や土や石などの試料を撮影した写真とは、まったく雰囲気を異にしている。
綺麗な人だった。
大学内だろうか?
雑然とした書架や机が並ぶ中、生成のシャツの上に白衣を着た、ほっそりとした人の上半身が写っていたいた。手には資料やファイルを抱えている。その背後で翻る濃いベージュのカーテン。
フィルム撮影のせいか、デジカメ写真とはニュアンスがまるで違って、モノの輪郭がふんわりしている。
けれど、その人の印象は鮮烈だった。
肩の辺りまで伸びた黒髪を無造作にまとめて、クリップで留めている。細面も、白衣からのぞく華奢な腕も白磁のようだ。こちらを見ている瞳は凛として、眉間に力が入っている。「なに?」と、今にも口走りそうな表情が、ひどく印象的だった。
誰だろう、と訝りながら裏返してみるが、残念ながら情報はない。他にも何かあるかも、とアツヒロは改めて箱の中身を、
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