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「フ……流石はアシュタロト大公爵のお嬢さん。気位だけは天を突くほどに高い」
ガツッと鈎爪の手に額を掴まれ、生臭い息を吐く口がナルシアの目前に迫った。
「ならば人間の女など相手にせず、今宵は魔界の名士の令嬢と宴をしよう。その下衆な下等悪魔の子を孕むが良い。その時、父上の大公爵はどんな顔をするかな」
「は!? キモいこと言ってんじゃな……!」
押し退けようとした手にいつの間にか他の下等魔が群がって磔にされている。手だけではなく脚も、そして頭も。
(うそっ! ……え……っ?)
鈎爪に掴まれた額から魔力が吸い取られていくのがわかる。気は焦るのに、身体に全く力が入らず指先一つも動かせない。
「クク……悪魔は高位であるほど魅了の力も大きいもの。血筋がいいとはいえ、アンタも黙ってりゃ相当イイ……」
長い爪の先がナルシアの首筋を伝い降り、触れたローブの胸元が腐敗するように溶けていく。
「や……っ!」
「おお、これは見事。もとより我ら悪魔の本体に衣など無用だろう? さあ楽しもうか。さぞかし……」
ニヤリと耳まで口角を上げる下卑た笑い顔が、突然目の前で砕け散った。
「……ッ!?」
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