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頭部だけがなくなり、残った身体がドロリと溶け落ちる。飛来した矢に打ち抜かれたのだと気付いたのは、一瞬の間を置いた後。
(これは……)
ナルシアが強張った首を矢が飛来した方向に向けると。
「きゃああっ!?」
ゴッ!と次の一矢が彼女の鼻先スレスレを通過して足元の地面に突き立った。その途端、周囲に熱風が巻き起こり、ナルシアを押さえつけていた下等魔たちがジュッと焼滅する。
「……パズー」
均整の取れた肢体に纏うのは、青い蛇と魔力の闇だけ。四枚の翼で宙に留まり、黄金の髪をなびかせたパズーがそこにいた。
(来てくれた……)
「おう……クソ雑魚ども。ウチの姫に指一本でも触れたヤツはそこ並べ……。地獄にも行けると思うんじゃねぇぞゴラァァァ!!」
啖呵一つで焼けた風がゴウッ!と押し寄せる。
『パズズ、サマ……!』
『熱砂ノ悪魔王パズズ……怖イ……コワイ……』
『消サレル……! パズズ、容赦ナイ……!』
彼がさらなる矢を番えただけで、周囲から魔の気配が跡形もなく消え失せてしまった。一瞬にして。
「チッ、クソ雑魚どもが」
続けて、奇声のような悲鳴を上げながら教会から人間の女たちが逃げてゆく。どうやら一部始終を目にしてしまったようだ。
「まあいい。これで悪魔と慣れ合おうなどとおこがましい事は二度と考えんだろう。……レベル5は別のミッションでやり直しだ」
冷やかに見据えられて、ナルシアはちょっとだけバツが悪い。
「……はぁい。てか、なんで本性に戻るとそんな偉そうなの」
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