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「それはもう。そんな悪いお口は消毒せねば。おお! 偶然わたくし、口の中に消毒薬を含んでおりました」
「それを私に口移しで、と?」
「よろしいですね!?」
「ヤなこったですわ」
「おふうっ!! ごっくん!?」
期待を見事に打ち砕かれ、ついでに消毒薬まで飲み込んで身悶えるのは彼の日常。
パズーは己が仕える幼い姫君をたいそう大事に育て、守り、ギュンギュンに愛で、そして超性的な目で見ている。
「とにかく、もう少しお言葉使いは上品に。あなたさまは幼くともこの公爵家のプリンセスなのですから」
キリリと口元を引き締め、パズーは体勢を立て直した。
へムタイではあるが、黄金の髪に瑠璃色の瞳がクールかつ蠱惑的。隙のない佇まいで黒服を凛と着こなす彼は相当な美形である。
町へ買い出しに行けば、女たちはパズーとすれ違っただけでズキュン!と疼かされ、その場に頽れる。
だが彼にとって、道すがら出来ていく女屍累々などは道ばたの石ころ。あるいは飼い主が回収を怠ったワンコのンコに過ぎないのだ。
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