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「わたくしはナルシアさまのお世話だけでなく、令嬢としての教育も公爵から一任されておりますゆえ。そこをお忘れなく」
代々敵の多い公爵家は我が子に危害が及ばぬよう、ある程度成長するまでは別宅で密かに育てるのが慣例。
まだ幼いナルシアも本家から遠い辺境の地に隠れ家を設け、父親の腹心であるパズーを供にひっそりと暮らしている。
「はぅん……バトルの時はつい熱くなってしまいますの」
「そこです」
「どこかしら?」
ナルシアはゲームのコントローラーを持ち上げて、座っている上質な皮ラグの上を見回した。
「とぼけるのはおやめなさい。ゲームは一日二時間という約束を破り、こんな夜更けにまたバトって」
屋敷を囲む森の木々は夜露に濡れ、良い子はとうに寝る時間だ。
「まあパズー、なんてお堅い。だってしたかったんですもの」
「ブフォッ!?」
噴き出した鼻血を胸のポケットチーフで押さえる、秒の早業。
「し……シタかった……カタい!? この可愛らしい唇からそんな大胆な発言を……かくなる上は!」
鼻の穴にチーフを捻じ込み、パズーが跪いてナルシアの手を取る。
「結婚してください。二年間くらい」
「なるほどですわ。二年経ったら私、幼女ではなくなりますものね」
コクンと真摯にうなずく彼はいつもいつでも本気なのだ。
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