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 雇っていたおじさん達まで解雇せざるを得なくなり、工場はとうとう父と稔、事務手伝いの私だけになってしまったのだ。 「なあ、莉緒」  電卓を叩いていた私の元に、手に付いた油を拭きながら稔がやって来た。 「あ、ごめんなさい。終わった? 終わったら帰ってもいいよ」  稔は、ああ、と応えたけれど所在無さげに立ったまま帰る支度を始めない。 「どうかした?」  まさか、辞めたいとか言わないよね?  不安な気持ちで稔を見ると、稔は言いにくそうな顔で、躊躇いがちに口を開いた。 「あのさ」
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