26人が本棚に入れています
本棚に追加
雇っていたおじさん達まで解雇せざるを得なくなり、工場はとうとう父と稔、事務手伝いの私だけになってしまったのだ。
「なあ、莉緒」
電卓を叩いていた私の元に、手に付いた油を拭きながら稔がやって来た。
「あ、ごめんなさい。終わった? 終わったら帰ってもいいよ」
稔は、ああ、と応えたけれど所在無さげに立ったまま帰る支度を始めない。
「どうかした?」
まさか、辞めたいとか言わないよね?
不安な気持ちで稔を見ると、稔は言いにくそうな顔で、躊躇いがちに口を開いた。
「あのさ」
最初のコメントを投稿しよう!