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 グレていてどうにもならなかった少年はいつしか真面目に働くようになり、成人を迎え、現在に至っている。  稔が働けていたのはきっと、周りにいた、一緒に働くおじさん達のフォローのおかげと思う。  そうでなければこんな工場。 「稔! なにやってんだ!」  今日も父は荒れていた。  私が小さな頃穏やかだった父は、工場の経営状態の悪化と比例して荒れていった。数年前、元請けの会社が一つ倒産し益々苦しくなった辺りから、工場で働く人を殴るようになっていた。  若い子がみんな辞めていく中、真っ先に辞めてしまいそうだった稔だけが、残っていた。
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