視線

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「どうかしましたか?」  彼女に声をかけたのは、巡回中の警官だった。  立ち止まったまま、周囲を見回しイライラしている様子の柚希は、声をかけるべき相手だった。 「実は、誰かに後をつけられているみたいなのです」 「本当ですか?」 「はい、ずっと視線を感じるのです。でも、振り返っても誰もいなくて怖くて……」  柚希のすがるような思いは警官にも伝わった。  そして女性をつけ回し、怯えさせる犯人に対して警官は怒りを覚えた。 「分かりました。私がそこら辺を見てきましょう」  そう言って、警官は早速あちこちを見て回った。  十分に警戒しながら、角の向こう側や、民家の門の影など思い付くところを片端から見て回った。  だが、人影はおろか、そこに誰かがいたような痕跡もない。
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