視線

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 自分を呼ぶ声が聞こえたような気がして、警官は柚希が待っているはずの方を振り向いた。  だが、そこに人の姿は見えなかった。 「大丈夫ですか?」  慌てて戻るが、やはり女性の姿は見当たらなかった。  自分が目を離した隙に連れ去られたのか。  だが、静かな夜道で少しでも物騒な物音を立てれば気付きそうなものだ。  それに、争ったような形跡もない。  悪戯か、あるいは自分の仕事ぶりが気に食わず帰ってしまったか。  もしくはあの女性が幻だったのか。 「おかしな夜だなぁ」  そう呟きながら、警官は夜空を見上げた。  雲一つない夜空には、真ん丸で大きな満月が浮かんでいた。
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