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指一本。
かなりの額だった。
それでも亜沙には知られたくなかった。その思いだけで渡す。
『さすが、ものわかりの良い方ですね。それでは』
と、あらかじめ用意していたものを胸元から取り出した。
受け取ったものを確かめるとネガと古い写真。
『前田家を敵にはしたくないので、写真はデジタル処理等しておりません。それだけしかありません。あなたが賢明な方でよかった』
すれ違いざまに笑う男。
その気配は次第に去っていく。
亜沙と自分が、兄妹。
結ばれるには許されない関係。
この一枚の写真が告げる真実。
亜沙、あなたと一緒になることは許されない。
永遠に―――
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