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「わたしの目を見て!お願い、わたしの目を見てちゃんと答えて!」
声を震わせる許嫁が浴衣の袖を掴んだ。
息を整えて、ゆっくりと振り返る。
許嫁の細い肩。
そして黒髪、芯の強い黒真珠の瞳。
つかまれた袖から静かに許嫁の手を解いた。
「亜沙さん」
「はい」
許嫁の瞳はきれいに澄んでいた。
「不幸になるとわかっていてあなたを連れて行くわけにはいきません」
「……どうして。どうして家をでなければならないのですか?」
泣き出しそうな許嫁がくちびるを噛んだ。
家を出る理由。
それは。
隠された真実を知ってしまったから―――
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