許嫁

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『金、か?』 『いただいたらすぐに姿を消しますよ。あなたの前には二度と現れません。……あなたが自分の妹とこのまま事実を伏せて結婚したとしてもわたしには関係のない話です』 『強請るつもりか』 『いえ、人道的分別のある方なら、それがどういうことかおわかりになると思いますので』 『………』 『頭のよいあなた様ならどんな決断をすべきか御存知のはずです。犬畜生にも劣る、』 『いくら出せばいい?』 『さすがものわかりがいいですね。指一本、それで手を打ちましょう』 ニヤリ笑った黒眼鏡の下から蛇のような目が見えた。 前田家を敵にしたくないと、自分に話を持ってきたことで頭の良さがわかる。 亜沙にホレてるのを知ってて取引を持ちかけている。 自分が買うことですべてが丸く収まることを知っている。 この写真を自分が買わなければ目の前の男は亜沙に売り付けに行くのだろう。 どちらにしても男が笑える答えが待っている。
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