アパートにて

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アパートにて

 アパートへ帰ってみると、日曜の夕方だというのに中は真っ暗、妻は無論、いなくて森閑としている。  居るべき者が居ないというのは寂しい限りだ。  リビングのテーブルの上には三日前、妻が出て行った時に残しておいた置手紙とプリンタで作った何枚もの写真が萎れた差し花の横に重ね置いた儘になっている。  俺は取り敢えず電気をつけ、コンビニで買って来たウィスキーをテーブルに置いてから熱気でむんむんしている中を開放すべくカーテンを開け、掃き出し窓を開け、ベランダに出てみた。  俺の部屋は二階にある。  外の空気をちょっぴり涼しく感じ、直ぐに見飽きた景色に目を背け、部屋に入ると、こりゃ扇風機だけじゃ駄目だと思ってエアコンを付け、掃き出し窓を閉め、カーテンも閉めた。  俺はキッチンへ行って冷蔵庫の製氷機から氷を取り出し、アイスベールに入れた。  それからリビングのソファに腰を下ろすと、早速、オンザロックでやり出した。  その内、自然と置き手紙を取り上げ読み返してみると、妻の潔癖な性格が手に取るように分かった。  俺と妻がそれぞれ別の目的のため駅のプラットホームで別れた後、先に乗り換えた俺が電車の中で痴漢行為を働く様子を克明に書いてあり、それをスマホで何回も撮影したことも書いてあって俺がまるで浮気をしたかのように手紙の中で執拗に責めている。  俺に痴漢を働かせた女がへそ出しルックで露出度が非常に高く挑発的だったので、その後、肉体関係に至ったのではないかと疑っているのだ。
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