交番にて

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「面白いですねえ、是非お聞かせ願います」 「嗚呼、嫌だ嫌だ、こいつらと一緒にいるだけで虫唾が走る。第一、こんな会話でブスと和んでいられる神経が理解出来ん。ブスが、『いい男となら飲みに行くけど』って言ったんだぞ!腹立たんのか!お前ら!『お前なんかいい男が相手にする訳ないだろ!』って言ってやれ!それは無理にしても、そう思わんのか!まあ思っても、お前らはあの例の空気を読むというさもしい了見を起こしてブスに合わせて微笑んでいられる訳だが、『もち駄目よ』ってこれは幾ら何でもブスの冗談にはしておけん聞き捨てならん事だと思わんか。こんなふざけた事をブスに言われている様では、嗚呼、はっきり言って男としておしまいだな。それ位、屈辱的な事を言われているのにそれに対しブスが益々付け上がる冗談で返すとは全く呆れる。同調するのも大概にしろ!この阿呆上司は今までも俗物の御多分に漏れず常に勘定づくで物を考えて生きて来て、その場その場で姑息な手段を用いて皆を和ませ人望を集め良い人として出世して来た経歴が有るから、この場に於いても自分を笑いの種にする様な不味い顔その儘のプライド無き軽蔑に値する冗談に因ってブスを始め俗物どもを笑わせ首尾よく成功したと喜んでいる訳だ。どうやら俗世でみみっちく成功している者というのは、こういう低俗を極めた者が大半なのだろうな。つまり世の俗物どもが人望の有る良い人と呼んでいるのは大方この阿呆上司の類を指して呼んでいるのだろうな。全く阿呆ばっかりだとまあ、斯様に思った次第です」
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