交番にて

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交番にて

 地球温暖化をひしひしと感じる真夏の今日この頃。  日中、到頭、気温が40度に達した。  あと10年もすれば、夏の世は灼熱地獄と化すだろう。  俺はアスファルトの照り返しが異常にきつい歩道を歩きながら悲観した。  実際、体がうだるのを通り越して焼け焦げるように感じ、ぶっ倒れそうだった。  頭が変にならない方がおかしい位な陽気だ。  そう思った時、交番に差し掛かった。  俺は皆に変わり者扱いされるも自分こそ真人間と誇っているが、暑さの所為で頭が本当に変になりながら交番の引き戸を開け、中へつかつかと入って行った。 「市民が猛暑で倒れそうに歩いてるのにお巡りさんがこんなにクーラーの効いた部屋の中でそんなにのんびりと椅子に腰掛けてるとはおかしな話じゃないですか?」  交番に押し入るように入って来ていきなり文句を言う訳だから、こいつ、この暑さの所為でちょっと頭が変になってるんじゃないかと巡査は思ったらしくこう聞き返した。 「あなた、汗も酷く掻いてるし、熱中症になったんじゃないですか?」 「いやいや、熱中症になったら立ってられませんよ。熱中症になったかのようにふらふらしてるのは確かですが」 「そんなことを言いに態々交番に入って来たんですか?」 「いえ、私とお巡りさんとの関係に何か理不尽なものを感じたものですから」 「ああ、そうですか、そんなに言うのならそこの椅子に座って休まれたらどうです?」 「ああ、はい、では遠慮なく」  俺は汗をハンカチで拭きながら受付カウンターの横の机に据えてある椅子に腰かけると、頭が変になっているお陰で普段、何気に疑問に思っていることが自ずと口を衝いて出た。
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