崩壊への綻び

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崩壊への綻び

 ディンス国に属するインサイダー達。厚遇されながらも畏怖され、心の中では蔑まれ疎まれる存在。  黒と灰色の礼服に似た制服に身を包み、各自異なる色のついたストールやバンダナ、マントなどを身に着ける。  人々からは処刑人、死神、悪魔、国の操り人形……様々な呼ばれ方をされながらも彼らは意に介さずにいる。いや、意に介する事などないよう、徹底的に洗脳と教育されている者がほとんど……教育を施されてなくとも国と元老院への絶対の忠誠を誓う者であり、命令に忠実なる存在として存続している。  彼もその一人。ディンス国中枢区への門を抜け、鈍い銀の鎧を着た警備兵の敬礼を受けながら光のない紫の目で前を見据え、首に巻く赤のスカーフと後ろに下向きへ結いた二本の藍色の髪が歩調に合わせてゆらゆらと揺れ、左腕から胸にかけて巻きつける黒い鎖が擦れて小さく音を奏でつつ淡々と歩みを進め続ける。  彼の名はイスカ・チェーンテイル、インサイダーと呼ばれる執行人の一人……今日も任務を終えて、元老院への報告へ彼は向かっていた。
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