或る薬屋の話

大っ嫌い

「娘の分際で、一家の大黒柱に逆らうとは何事だ！」

いつも通りの言葉を吐かれ、いつも通り頬に平手打ちを貰う。

くそ野郎

そんなこと言ったら殺されるから言わないけれど、
彼奴には何となく伝わってるんだと思う。
衝撃で倒れたあたしの腹に間髪入れずに蹴りを食らわせる。

内臓が歪んでいる気がする
液体が込み上げ喉がチクチクする
ギリギリ吐けずに終わった気持ち悪さで開いた口
ひゅうひゅうと喉奥からの悲鳴のような音混じりの荒く短い呼吸
吸った直後に咳き込み倍吐かせる肺
押し出される舌の先と唇から涎が垂れる
苦しい
苦しい

母さんは今日も助けてくれない。
何度も『逆らうな』と言っているのに学習しない馬鹿な子。
そう思っている。
遠巻きに蔑んでくる目がそう言っている。

生憎あたしは母さんみたいな聞き分けの良い犬になんかなりたくないんだ。

一生抗ってやる。