あたしははとば

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あたしははとば

「女は慎ましく、男を立てるものだ」 「女ごときが男の上に立ってはいけない」 それがあたしのお父さまの口ぐせ。 いみはよく分からない。 でも、お父さまに「やだ」って言うとぶたれちゃうから 「やだ」って言っちゃだめってことなんだと思う。 長いかみはあついからやだって言っても あおが好きだからもも色はやだって言っても お外でおとこの子ともあそびたいって言っても お父さまにぶたれちゃう。 あれ? やだって言ってないのにぶたれちゃった。 どうして? わからないよ。 お母さんは「さからっちゃだめ」って言ってるの。 さからってるからぶたれちゃうんだって。 でもさからうって何だろう? ぶたれたほっぺがあかいから、 今日もほっぺにしっぷをはって、 かみの毛でかくすの。 みんながね、 あたしを 「たいへんね」 「かわいそうね」 って言うの。 でもね、 みんなはあたしを 「たいへん」からも 「かわいそう」からも たすけてくれないの。 だからあたしはずっとそのまんまなのよ。 あたしははとば。 「たいへん」で「かわいそう」な子。 じゃぁ、「はとば」って何?
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