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 ゆっくりと気遣うように揺さぶられ、焦ったさが胸を焦がしていた。もっと壊すくらい、求めてくれたって良いのにと。しかし、そんな余裕はすぐに崩れ去る事を、俺は毎回忘れてしまう。  いつだって要は自制していて、それがもう癖になって治せなくなっているということも。その箍が外れると、今度はこちらがやめて欲しいと懇願しても、止めてくれない獰猛さを隠している事も。  要の背中に指の腹を食い込ませて、初めは気遣う優しげな律動だったのに、もう既に豹変しかけている。 「あっ、あ……っかな」  名前を呼ぼうにも、直ぐに唇を塞がれてしまい、その言葉はただの文字となって要の喉奥へと飲み込まれてしまう。絡まる唾液を吸い、ひどく濡れた舌先で、胸の尖を弾かれる。軽く歯を立てられると、小さな刺激に身体の中を微粒の電流が走り、ぴりぴりとつま先を麻痺させる。その間も硬くなった性器は、身体の貫こうと抽送を繰り返しながら、奥へ奥へと進んでくる。肩を押さえつけられて、体が動かないように固定されると、要の激しい突き上げに眩暈がした。視界と身体を揺さぶられて、快楽が津波のように押し寄せてきて、俺はただ呼吸を忘れて溺れた。  やめて欲しいと涙が生理的に溢れても「まだだろ」と、制される。  内側が押し拡げるばかりか、乱暴に擦り上げられると、そこが発火したように熱くて、ただしがみつく以外に、何もできなくて、俺は要の伸び始めた髪に指を埋めて引き寄せる。  汗で濡れた髪が、頬に当たる。  彼の手が簡単に俺の片足の膝裏を持ち上げると、一層深く深く杭を埋められる。  気持ちいいと認めるのが怖いほど、体が震えた。 「あっ、やだ……変になるっ」 「ははっ、なれよ」  それを待っていると言わんばかりの口ぶりに、耳の中にぬるりとした舌が捩じ込まれ、水に沈んでいく。 「葵、好きだよ」    
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