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無理もない。日奈神子は、陽世を治める太陽神様のお付きであると同時に、太陽神殿の神仕えのトップ。実務は全て日奈神子が取り仕切っており、陽世のナンバー2と言っても過言ではない。
片や正波仁は、どこの誰とも知れぬただの民。本来であれば、日奈神子に直接意見するなど叶うはずもない身分なのだ。
しかし正波仁はなかなかどうして肝が据わっているようで、日奈神子が怒ってもたいして怯まない。
「偉い偉くないの問題ではないのです、よろしいですか日奈神子様、これはつまりですね……」
そこへ、騒がしさに気づいた太陽神様が、二人が話す謁見の間へとおいでになった。
「日奈神子、いったい何をそんなに怒っているんだい? ……おや、汝は……」
「陽術師の正波仁でございます。太陽神様、ご機嫌お麗しゅうございます」
正波仁は跪いて深く頭を垂れた。
「よいよい、そのように畏まらずとも。何か不都合でもあったのかね?」
「太陽神様、こやつは懲りもせずおかしな陽術で、このように私の顔を……」
日奈神子は不服そうな様子で、正波仁が出した紙を太陽神様にお見せした。
「ふむふむ、これは一体どうしたことだ?」
「正波仁が陽術で私の顔を写し取ったのですよ。害はないとはいえ、気分の良いものでないのは事実」
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