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「ふむ、しかしなかなか面白いではないか。これを神殿中に貼れば、皆は恐れて悪いことができなくなるであろうな」
「そんなものがなくとも清廉潔白であることこそ、神仕えに求められることでございます」
日奈神子はすっかり機嫌を損ねて、ツンと顔を背けた。
「太陽神様、日奈神子様、どうぞお聞きください。私はこの術で、太陽神様の肖像を民に広めたいのです」
「何? 我の顔を、民に?」
「そんな必要があるものですか」
日奈神子が言う。
「太陽神様のお顔を民に共有しようと思えば、送念で事足りるではないですか。現に私共からも、民達の間でも、太陽神様のお顔は折に触れ送念されています。陽世民は津々浦々まで、太陽神様のお顔を知っているのです。今さら紙に写して広めるなど、全く不要なこと」
「それが、どうやらそうでもなさそうなのですよ、日奈神子様。こちらをご覧ください」
正波仁は、懐からさらに数枚の紙を取り出した。
そこにはそれぞれ、某かの肖像が写し出されている。
「何ですか、この者達は」
「これは私めが、太陽神殿から遠く離れた集落の民から送念してもらった、太陽神様のお顔のイメージです」
「なんと! では、この老人も、この美丈夫も、ぼんやりと気の抜けた中年も、全て我だと申すのか」
正波仁は深く頷いた。
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