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 太陽神様の肖像は、すぐに陽世中に広まった。  各集落ではコミュニティセンターに太陽神様の写真を飾り、住民がいつでも拝観できるようにした。  これまで民達のイメージにあったぼんやりとした太陽神様のお顔は一転、彫りの深い目鼻立ち、力強く大きな瞳、凛々しい白い眉に、綺麗に手入れされた豊かな白髭の、威厳あるお顔に塗り替えられた。  額に輝く陽世の紋が、より一層太陽神様の神々しさを引き出している。  民達はそれをありがたがって、コミュニティセンターに足を運んでは「太陽神様見にきた」「わりとイケおじ」と送念し合った。  とある街では、太陽神様を描いた菓子を売り出し、それはもう大盛況となっているらしい。 「すっかり太陽神様ブームですよ」  状況報告に来た正波仁は、民達の様子を写し出した写真を太陽神様にお見せした。 「そうかそうか、それは良かった」 「こちらは、太陽神様のお菓子でございます。お口に合うかはさておき、お目にかけておいたほうが良ろしいかと存じまして」 「ほうほう、これはまた、なんとも可愛らしい我だな。民達の趣向には毎度驚かされる」 「しかし、太陽神様を食すというのは、あまり好ましいことではありますまいよ」  異を唱えたのは日奈神子だ。 「娯楽として親しむのも良いが、太陽神様への畏敬の念を忘れてもらっては困ります」 「まあまあ、我は構わぬぞ。民達が喜んでいるなら、それは良きこと。大目にみるとしよう」
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