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陽世民はやがて、太陽神様の真の姿を紙へと写し出した「写真」という手法に興味を持ち始めた。
発案者である正波仁はすっかり時の人となり、民達に乞われて講演会を開いたり、各地の陽術師に写真術を伝授したりと、忙しく陽世中を飛び回った。
その中で、民達から写真に写し出してほしいものをリクエストされることが多くあり、中でも断トツで多かった要望が、「陰世を見てみたい」であった。
陽世民は、陰世民と一切交わりがない。陽世の裏側に陰世という世界があるらしい、とは知らされているものの、誰一人として陰世の正体を知らない。
そのため、“陰”であるからには何となく不吉で恐ろしいもの、というイメージだけが皆の心にあった。
その陰世を、視覚的に認識してみたい。本当に陰世が存在するのか、陰世民がどのような風貌で、どのような暮らしをしているのか見てみたい。陽世民は常々そう思っていたのである。
正波仁は、これを太陽神様にお伝えしようと、講演会や伝授会をいったん取りやめて太陽神殿へと赴いた。
陰世のことを知るのは、陽世ではただお一人、太陽神様のみなのだ。
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