バケモノの僕

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 生まれた時からずっと、生まれた意味がわからなかった。母さんがどうして僕を産んだのかもどうして僕が生まれてしまったのかも……わからなかった。  ――何故なら僕は、バケモノだから。  生きる価値なんてない。誰からも必要とされていない。いや、寧ろ疎まれているだろう。その証拠に家族もクラスの奴らも僕には一切近寄らない。 「……朝なんて、来なければいいのに」  そうすれば、会わなくて済むのに。行かなくて済むのに。生きなくて済むのに。いつも通りの何も無い日常が、痛みも苦しみも伴わず忽然と消えてくれればいい。誰の記憶にも残らなくていいからこの世界から解放されたい。 「はぁ…………」  雑多な思考を体現するように、部屋には服や教科書が散乱している。窓から差し込む仄かな月明かりが、それを映し出している。 「なんで僕、生まれちゃったのかなぁ……」  十八年生きてきて、一度も生まれてよかったなんて思えなかった。生まれてさえ来なければ死にたいなんて思うこともなかったし、どうして僕を産んだんだ、と両親を憎むこともなかった。母さんだって、産まなきゃよかったと言うくらいなのだから……僕なんか死んでしまった方がいいのかもしれない。  テレビで聞く綺麗事を心から信じられるような、そんな人間になれたらよかった。 『生きていればいい事がある』 『望まれずに産まれる子なんて居ない』 『平和な世界に生まれたことに感謝すべき』 『必ず分かり合える人はいる』 『苦しみは神様が与えた試練』  こんな言葉を信じられたら。そうしたらきっと……。
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