いくつかある内の後悔と予感

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水泳部の部長はテルというやつで、偶然3年間クラスが同じだったことや性格が似ていたこともあり親友と呼べるほど仲がよかった。 テルは国体の強化選手に選出される実力を持っており僕はその頃もう選手ではなかったので、体のメンテナンスをしたり食事の指導をしていた。家が駅2つしか違わないほど近かったので、休みの日は区民プールで自主練に付き合ったりもした。 そんなテルにも彼女がいた。 テルは「純白の会」には所属していなかったので制裁は無かったが、ハーフと間違われるほど整った顔を持っていたので僕含め会員は嫉妬する気も起きなかったと思う。彼らは基本的に彼女がいる男に不満を抱いていたが、人当たりが良くて絵に描いたような爽やか好青年のテルはその対象にならなかったのだろう。そういう所だぞ、と当時の会員にアドバイスしてやりたい。 テルの彼女はミサコという、吹奏楽部でアルトサックス担当の可愛くて気立てが良く、ソロパートを任されるくらい楽器が上手な学年で1、2を争う人気の女子で、おまけに頭も良い。誰もが羨む美男美女カップルの出来上がりだ。流石に親友には嫉妬しなかったが、なるほど会員は嫉妬する気も起きないワケだ。もちろん会員とテルは仲が良かったし、テルは彼女自慢なんてしたことはなかったが、やはりオンナの話題になると欲望を垂れ流していた。だって君ら挨拶くらいしか話すこと無いもんね。 水泳部は他の部活と違い、3年生の夏か終わって引退という文化は無くしっかり最後の春まで大会に出る事になっていた。もちろん夏が終われば受験勉強が始まるので練習は自主参加であったが、ほとんどの3年生は部活に顔を出しながら夜遅くまで勉強するキツめの生活を半年以上送っていた。 僕といえば週1回部員のメンテナンスをするために顔を出すくらいで、普通の受験生と変わらない生活を送っていた。今まで散々サボっていたツケを回収するために勉学に励んだお陰で、ギリギリ大学に入れて良かった。 名前は忘れてしまったが、テルはそこそこ頭の良い大阪の大学に水泳の推薦入学が決まっていたので好きなように水泳をしていた。「スポーツ推薦で入れなきゃ大学なんて行けねーよ」 と笑いながら言い放つほどの残念な頭脳を持っていたので、決まって本当に良かった。 僕らの高校は少し特殊で、3年生になると好きなように授業を取ることができた。勿論最低いくつ取らなければいけない、というのは決まっていたが、各々自分が勉強したいことをやりなさい、という学校の方針であった。 部活に行かなくなった僕は受験が近づくにつれテルと一緒に帰ることもなくなり、向こうは化学専攻、僕は政治経済を専攻していたので学校で話すことも少なくなっていった。テルは最後の夏の大会で思うような結果を残せておらず、校内の期待を背負った彼はスランプに陥っていた。 この時、もっと彼を気遣っていれば、話をしておけばよかったと今でも後悔する時がある。
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