追憶♯1

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別れを切り出したのは私だ。 いや、正確にはそういった雰囲気を最初に出したのが私だ。 彼は鈍い方ではあったが、しばらくしてようやく察しようだった。 彼に言わせた私は今でもずるいと思う。 彼は変わらなさすぎた。 それは良いことでもあり、悪いことでもある。 もちろん100%変わってないとは思わない。 彼なりに変わった所もある。 でもそれは、私が望む方向ではなかった。 昔のままの彼でいて欲しかったし、昔のままの彼でいて欲しくなかった。 私も彼も変わったし、変わらなかった。 成熟していなかったと言えばそれまでなのだが。 もし彼と別れなかったら。 もしあの日に戻れたなら。 二人で働き、支え合いながら子供達と騒いで面白おかしく暮らしていたかもしれない。 今よりずっと喧嘩も増えただろうし、子供を叱る回数も多かったかもしれない。 それでも、忙しなくとも充実していたかもしれない。 そんな未来もあったかもしれない。
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